IPOインタビュー

INTERVIEW

株式会社GENOVA

https://genova.co.jp/

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上場までの道のりは非常にドラマチックだった

村田 上場おめでとうございます。本日は上場日の翌営業日(2022年12月26日)です。現在の率直な感想をお聞かせください。

武田 ほっとしたというのが実感です。「東証審査まで進めば大丈夫でしょう」という雰囲気はありましたが、その東証審査が大変だったので、無事上場できて一安心です。

村田 武田さんが入社したのはいつですか?

武田 2018年4月です。「来年上場したいのでプロジェクトの責任者としてきてほしい」といわれ、入社しました。気づいたら丸4年経過していましたが…(笑)

新谷 ここに至るまで、非常にドラマチックだったなというのが率直な印象です。審査や株価の交渉など、それぞれのタイミングでドラマがあっということを強く感じています。私は3年前、武田さんと同じく「上場するにあたり事業を強化していきたい」ということで入社したのですが、当時は初月からキャッシュアウトしそうで、上場どころではなかったのが、強く印象に残っています。

村田 そのとき、売上高はいくらくらいでしたか?

武田 当時はまだ、月2億円に満たないくらいでした。半年経過した時点で3億円の赤字でしたから。でもそれを下期で取り返したんですよ。まさに奇跡に近かったですね。でも当時は毎日、資金繰りをどうしようかって考えてばかりで、上場の話よりも資金繰りをどうするかを考えていました。

村田 上場の前日はよく眠れましたか。

新谷 よく眠れましたが早起きしてしまいましたね。東証には9時45分に集合でしたが、1時間以上前には到着して仕事をしていました。笑
初めて上場会社として東証に足を踏み入れたときは、「おーっ」と感動しました。私はまだ入社3年ですが、社歴が10年を超えるような社員はとても感慨深く当日を迎えたと思います。

 

「上場延期」という試練を乗り越えて

 

村田 上場準備の体制は、どんな感じでしたか?

武田 当初は私ひとりで準備を進めていました。

真野(現取締役)ジョインしたころから組織を作ることを考え始め、新谷と三人体制で進めていました。その後、メンバーの入れ替わりがあり、基本的には私と新谷が中心となって、徐々に他のメンバーも増えていきました。東証審査くらいまでは、新谷と二人で進めていました。

村田 お二人が中心となって、各部門と連携する形で進めていったのですね。IPOにあたっては、証券会社、監査法人など関係者がたくさん出てくるじゃないですか。連携で印象的なことはありますか?

武田 IPO経験のある人がたくさんいたので助けてもらうことが多かったですね。しかし、一つの事象に対して正解は必ずしも一つではありません。そのためさまざまなアドバイスが寄せられることがあり、判断に迷うことも少なくありませんでした。特定の人を定め、「この人の意見は聞いた方がいい」と明確にしたのは後半のあたりですね。

新谷 東証については、指示された作業を粛々とやることになると思いますが、その一方、前段階として証券審査があります。東証審査と証券審査では、もっと質問が被るかと思ったのですが、それほどではありませんでした。いま思うのは、証券審査に入る前からもっと他社の事例をきっちりキャッチアップしておけばよかったということ。個社ごとに、なにが調査の重点項目になるかは違いますが、相対的に見て、当社は厳しい目で審査をされた方だと思います。そのような会社の事例を事前にキャッチアップできていれば、もっとスムーズに進められたのでは、と思います。

村田 証券審査と東証審査の違いは、どこにあると思いますか?

武田 個人的な感覚ですが、証券会社はどちらかというと社内的な審査というか、「推薦証券として東証に出せるか?」といった視点での審査だったと思います。一方東証審査は、「投資家が売買を行う対象としてふさわしいかどうか?」という投資家保護の視点での審査でした。二つの審査は視点が違った、という印象があります。

村田 ちょうど去年の今頃、「上場を1年延期する」という残念な決断がなされました。あの頃のことを振り返って、どう思いますか?

武田 正直な話、「1年延期する」と言われたときは「なんで?」という気持ちがありました。ただ、いま思い返せば延期も仕方ないと思います。当時は社内的にもギリギリの状態でしたし、提出する資料も全部確認することができないほど人員が足りない状況でした。逆に、そのような状態で上場してしまうと上場後には痛い目に遭う可能性が高かったと思います。

村田 今だから言える話ですが、あのとき、「もうこんなに大変ならやめてしまおう」みたいな雰囲気も一瞬ありましたよね。あのときサジを投げなくて本当によかったですね。

新谷 私は毎年、社長と一緒にニセコへスキーやスノーボードをしに行くのですが、その旅行中、「1年延期」の知らせが入り、社長にも伝えました。そこからの旅行は対応に追われることとなり旅行どころではありませんでした(笑)

武田 それまでは審査の担当者から「ここが弱いので強化しておいてください」と、軽く指摘されていたくらいだったので、多少甘く考えていた部分もあったかもしれません。でも実際、ふたを開けてみたらダメでした。そのときはちょうど我々は冬休みで、冬休みに入った初日にプライベートの携帯電話に証券会社から連絡が入り、嫌な予感が的中しました。

新谷 でも、そこからの1年は本当にあっという間でした。やることが多く、忙殺されていた感じがします。

「崖っぷちです」と言われながらも熱意と誠実さで前進

村田 武田さんと新谷さん、それぞれどうやって役割分担をしていたのですか?

新谷 証券審査や東証審査など、審査関連は武田さん、株価の調整や機関投資家への対応は私が担当していました。

村田 連携は順調でしたか?

新谷 それぞれの考えがありますから、対立がまったくなかったわけではありませんが、審査については一緒に出席していたこともあり、「いま、何が課題なのか?」という部分は共有できていたと思います。

村田 東証を申請したのは9月9日。そのときは、お二人と社長が出席されたのですか?

武田 そうです。でも申請の前にSBI経由で問い合わせがたくさん来ていました。SBIの担当者からも「まだ申請していないのに、こんなに問い合わせがくることは珍しいですよ」と言われました。

村田 1回目は、事業の話でさくっと終わったんですよね。

武田 1回目の午前中は、ですね。「ちょっと進捗遅いですね、でも問題ありません」と言われて終わりました。でも、午後からは結構厳しかったですよ。開始が10時で、終わったのが19時。

村田 あのときは、ちょっとまずいなって感じがありました?

新谷 「崖っぷちです」と言われました。「次に挽回できなかったらダメですね」って。

武田 正直なところ、当時の記憶はあまり残っていないんです。怒られたことやまずいと感じたことは覚えているのですが、ヒアリングで何を聞かれたかはあまり記憶に残っていません。

村田 2回目以降も厳しく、何回もひやっとするタイミングがあったかと思いますが、これまでで一番「もうダメだ!」と思った瞬間は?

武田 1回目のヒアリングですね。

緊急ミーティングを開催し、課題を共有してから流れが変わった

村田 しかし御社の場合、確かにスタートはマイナスだったかもしれませんが、一歩一歩信頼を重ねていき、見事上場を果たすことになりました。どの辺で、「これはいける」と手応えを感じましたか?

新谷 やはり2回目のヒアリングがターニングポイントだったと思います。1回目終わったとき、村田さんから「関係各位を集めましょう」ってアドバイスいただきました。そのあとすぐに関係各位をZOOMで集め、緊急ミーティングを開催し、積み残した課題などを総ざらいしました。そうやって、危機感をみんなで共有できたのが大きなきっかけになったと思います。当社の場合、持株比率が10%くらいあり、皆さんそれなりに株式を持っていらっしゃることもあり、そこから自分ごととしてとらえ、手伝ってくださることが増えました。2回目のヒアリングは当社への訪問であったこともあり、10人以上の体制で臨みましたが、それぞれが得意領域を持ち、対処できたことで、絶望的な崖っぷちから一歩踏み出した感じがします。

村田 そこから会社一丸となり、各部の協力も得られるようになったのですね。

武田 それから、東証から言われたのは、「指摘してからの対応が早い」ということ。皆で週末も、昼夜関係なく動いてきましたから。

新谷 役員会もすぐに開いていただきました。

村田 そうした対応はとても有効ですよね。遅れた分を取り返すという姿勢を見せる、という意味でも。どのあたりで、「これはいける」という手応えを感じましたか?

武田 最後のヒアリングが昼くらいでサクッと終了したんです。それほど簡単に終わるとはまったくの予想外で、「聞きたいことは聞けました」と帰られたので、「これで終わったな」と思いました。でも翌週も、追加確認でたくさん電話がかかってきましたが…(笑)

村田 社長説明会が終わり、承認発表が11月18日。電話は何時ごろかかってきたのですか?

武田 12時ちょっと前です。「まだ課題はたくさんありますが、これまで指摘してきたことはプライム市場の審査のときに聞かれるのでしっかりと対応していただかないとすこぶる印象が悪いので、確実に対処してください」と。

村田 「すこぶる」と…(笑)

武田 しかし、「正直、ここまで関与した会社は、私はいままでありませんでしたし、最終的には、上場してほしいという気持ちになりました」ということも、言われました。

村田 きっと、武田さんや新谷さんの一生懸命さが伝わったのでしょうね。上場セレモニーはどんな感じでしたか?

武田 意外とセレモニーっぽい雰囲気はありませんでした。どちらかというとSBIの方が、祝賀ムードが強かったですね。執務室に迎えられ、100人くらいのスタッフの方が、起立して拍手をしてくれました。

新谷 東証の電光掲示板に「祝上場」と表示されたときは感無量でしたね。特に社歴が長い社員たちは感激していたようです。

村田 まさか上場会社になるとは思っていなかったでしょうから、感激も大きいでしょうね。ロードショーはどんな感じでしたか? 全部オンライン?

新谷 全部オンラインです。各社いろいろな質問があり口も違いました。全部で45社の機関投資家と面談を行い、たいてい15分の説明と質疑応答で45分というのが基本的な構成でした。

村田 どんな質問が多かったんですか?

新谷 「なぜ、この時期に上場するんですか」ということや、「コロナ禍及びアフターコロナにおける影響度合い」「売上や利益の話」「差別化ポイント」「成長戦略」についてはたいていの投資家から深堀して聞かれました。
加えて、今回の上場では旧臨報方式を選択しており、海外機関投資家向けマテリアルの作成を意識しました。具体的には、情報がtoo muchにならないよう、そぎ落として磨きこみを行い、ディープダイブしてもらうポイントをちりばめました。そのため、マネタイズの手法などについては詳述していなかったこともあり、このあたりは改めて確認いただきました。
ロードショーマテリアルは意見をもらう方、全員意見が異なります。ここは誰を信じればいいのか疑心暗鬼になると思います。ただ、マーケティングと一緒で誰に・何を・どのように伝えるかということを意識し調整を行うことが非常に重要だと感じます。

組織づくりは“筋トレ”のようなもの。早めに結成し、血肉を育てる

村田 これから上場を目指す企業にアドバイスをお願いします。

新谷 強く思うのは、上場は“なまもの”だということです。たくさんアドバイスをいただきましたが、中には、情報が古いものや規模感の合っていないアドバイスもありました。上場時期によって重視されるポイントも違いますし、企業によって見られる部分も違います。できれば最近、実際に上場に携わった人の話を聞くのが一番良いのではと思います。

武田 確かに会社の規模も、それぞれ違いますからね。

新谷 上場前にやるべきことはたくさんありますが、そのなかでいつなにをするかということを明確にしておくことも大切。たとえば、N-2くらいのタイミングでは、割とゆったりした空気が流れているのですが、そのタイミングでⅠの部などの書面準備に早めに取り掛かれていれば会社の言語化を進める中で、課題も見えてきます。

村田 遡って、「なぜやっていないんですか」と言われるのも辛いですからね。

新谷 人事・労務などは思っているより数段厳しく追求されるので、覚悟して臨むべきだと思います。たとえば、「打刻している勤務時間と実態に乖離はないか」「退職した人の残業時間に問題がないと、退職者全員に確認が取れているか」など、「多分大丈夫です」では通用しない。そのあたりを詰めていかないと、あとで痛い目にあう気がします。
また、上場は「審査×エクイティストーリー」ですが、エクイティストーリーは自分たちで情報収集し、行動していかないと気づいたら上場日を迎えるといったことになってしまうので、注意を払う必要があります。

村田 武田さんは会計士の資格をお持ちですから、これから、同業のお友達にIPOについて尋ねられることもあると思います。どんなアドバイスを送りますか。

武田 当社の場合、上場を延期したときは人員不足により内部の管理体制が不十分でした。いま思うのは、各担当のキーマンを早めに見つけた方が良いということですね。

村田 組織づくりは筋トレのようなもの。できるだけ早くチームを結成し、トレーニングを始めていたら、自分たちの筋肉として育てることができます。しかし、書類作成だけ外部に代行しても、血の通った筋肉にはならない。組織づくりはそれと同じですね

「情報のキャッチアップを誰からするか?」も課題

新谷 それから今回、上場準備を経験する中で、様々なIPO準備をしている企業の代表とお話しする機会がありましたが、耳障りの良い情報だけでなく、失敗した事例や難しい事例にきちんと耳を傾け自社に適切なIPOを投資を実行すべきであると思いました。

村田 どうやって理解を求めたら良いと思いますか?

武田 当社の場合は、上場が一度延期になったのがひとつのきっかけになりました。それまでは管理部門の人員増加についてはネガティブでした。

新谷 社長が、他社の社長に話を聞くということももちろん大事なのですが、「上場を目指す社長」と「上場をさせたCFO」が話すべき。役割が違えば、キャッチアップする情報もまったく違うので。

村田 昔は毎回、ヒアリングに社長が同席していたんですよね。すると社長の他の業務がすべて滞るので現在のように、社長の同席は必須ではなくなったんです。でもそうすると、社長にとっては「すべてCFOが進めてくれて、気がついたら上場していた」ということになりがち。ここがちょっと難しいですね。

村田 最後にパブリックゲートに一言、お願いいたします。

武田 一番辛かった東証審査の期間、いただいたアドバイスが一番的をえていましたし、心の支えになっていたので、当社と一緒に頑張っていただけて本当によかったと思います。

新谷 審査中、質問の背景や、何をすべきかということをご指導いただいたり、「更問いでは、これ聞かれますよ、予習しておいてください」と言われたことは本当にその通りになったので、とても助かりました。
また、幾度となくピンチを迎える度に、村田さんに毎回同じ塚田農場の店舗で激励をいただいのは忘れません。
上場も果たしましたので是非ご一緒させてください。笑

武田 それから、客観的な立場から社長へ意見を伝えていただいたことも助かりました。

村田 今回は本当に上場おめでとうございます。これからのご活躍を期待しています。お話をお聞かせいただき、どうもありがとうございました。

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